「念のため、私が最後に目を通してから出すようにしているんです。」
AIや仲間が作った下書きを、確認して外に出す立場の方から、こうした言葉を聞くことがあります。変革や企画を進める担当者、チームを預かる管理職、会社の名前で何かを出す経営者。立場は違っても、「自分が見ていないものが外に出るのは怖い」という感覚は、多くの方に心当たりがあるのではないでしょうか。
ミスを防ぐために承認の手順を設け、ダブルチェックを取り入れている企業も少なくありません。AIの活用によって下書きや資料を短時間で作れるようになった一方で、それらを確認する人の負担は増えているかもしれません。確認を依頼しても、なかなか返事が来ない。その結果、公開や送付の準備が整っていても、承認待ちで仕事が止まってしまうことがあります。
そうなると、話はつい「確認する人が忙しすぎる」「もう一人、確認役を増やそう」という方向に流れていきます。
しかし、こうした問題を解決するには、確認する人を増やすだけでなく、承認の仕組みそのものを見直す必要があります。私たちが着目しているのは、承認の目的です。何かを決めるための承認もあれば、内容を把握するためだけの承認もある。それぞれの目的を整理することで、必要な確認を残しながら、仕事が止まる場面を減らせるのではないでしょうか。
そして厄介なことに、承認待ちで止まった仕事は、その状況が周囲から見えにくいものです。承認する本人は「あとで確認しよう」と考え、作成した担当者は「確認をお願いしたから、あとは返事を待つだけ」と考えている。その間にも、公開や送付を担当する人は、次の作業に進めずにいます。
必要なのは、承認をただ増やすことでも、すべてなくすことでもありません。人が本当に判断すべき場面を見極め、確認の仕組みを見直すことです。
この記事では、承認によって仕事が止まる理由を、私自身の実体験を交えながら考えます。そのうえで、承認の3つの種類と、確認の仕組みを変えるための考え方、承認待ちを見える化する方法を整理します。AIによって仕事の進め方が変わる今、人はどこに時間を使うべきなのか。その問いについても考えていきます。
1. AIで仕事は速くなったのに、なぜ承認待ちで止まるのか?
承認を挟むこと自体は、間違っていません。外に出る文章や、お金が動く手続きに、誰かがもう一度目を通す。そこで誤字や宛先の間違い、会社として不適切な表現が見つかることもあります。承認があったからこそ、防げたミスもあるはずです。
一方で、確認が必要な工程を増やすほど、仕事には返事を待つ場面が増えていきます。承認の仕組みは品質を守るために必要ですが、その運用によって仕事の進行が妨げられていないかも考えなければなりません。
例えば、資料を作成した担当者が上司に確認を依頼し、その返事を待っている状態です。資料自体は完成していても、承認が得られなければ次の作業に進めません。こうした待ち時間は、作業そのものにかかる時間とは違い、見過ごされやすいものです。
もちろん、確認する人が怠けているわけではありません。むしろ、確認する立場の人ほど他にも仕事を抱えていて、「あとで見る」が積み重なります。つまり、仕事を止めているのは人の意志ではなく、「返事が来るまで進まない」という仕組みそのものかもしれないのです。
承認待ちは、仕事の流れの中で見落とされやすい待ち時間の一つです。
AIに任せたはずの仕事が、私のところで止まっていた
私の会社では、AIが毎朝、記事の下書きを作って共有フォルダに格納する運用をしています。本文も、図も、公開前の検査も、AIが済ませます。公開作業は、デジタルマーケティングを担う仲間が受け取って進めます。私の役割は、その流れの途中で、必要なところだけ目を通すことでした。
あるとき、私は「記事のタイトルは、AIが決めずに私が選ぶ」と決めました。タイトルは記事の顔であり、どの言葉で読者に届けるかは、私が選びたい仕事だと思ったからです。ところが数日のうちに、私の確認漏れで下書きが止まり、公開作業を担う仲間が待たされることが続きました。選びたかっただけなのに、私自身が仕事を止める関所になっていたのです。
その朝、私が口にしたのは、こんな一言でした。
「このルーティンって、本当に私の承認作業、必要? 確認が漏れて、止まってしまうことが多い。」
言いながら、気づいたことがあります。私が残したかったのは「選ぶ」という仕事であって、「進めてよいかを私に聞く」という手順ではなかった。それなのに、選ぶために承認の形を取ったことで、私の返事がない時間はすべて、仲間の待ち時間になっていました。
また、別の仕事では、複数の部門の資料を並行して確認していたことがありました。五つの部門に修正を依頼したところで、私自身の頭の整理が追いつかなくなり、ほかの部門の確認を一時的に止めることになりました。
「頭が追いつかないので、いったん反映待ちで、他の部門の確認はしていません。」
当時、実際にそう伝えています。一度に多くの仕事を確認しようとしても、確認する側が対応できる量には限界があります。承認を一人に集中させることが、かえって仕事の進行を妨げる場合もあるのだと感じました。
もちろん、これは私の身の回りで起きた出来事であり、この観察だけから一般的な因果関係を示せるものではありません。ただ、承認で仕事が止まる仕組みを考えるうえで、一つの示唆があるように感じています。
承認には、本当に必要な判断と、承認という形を取らなくてもよい確認が混ざっているのではないか。
では、その違いをどのように見極めればよいのでしょうか。
2. 承認には3種類ある
私たちは、承認の手順を見直すときに、「何のために承認しているのか」という目的から、3つの種類に分けて考えています。
これは学術的な分類ではなく、実務の中で整理したフレームワークです。普段、一つの「承認」という言葉で扱われている仕事も、その役割を分けてみると、必ずしもすべてを同じ手順にする必要はないことが見えてきます。
① 決める承認
複数の選択肢から、方向性を決めるための承認です。例えば、記事のタイトルをA案とB案のどちらにするか、提案の軸を何にするか、複数の企画からどれを採用するかといった判断が該当します。
この承認では、単に内容を確認するだけでなく、責任を持って意思決定することが求められます。そのため、誰が決めるのかを明確にし、必要な判断を適切な人に残すことが重要です。
② 実行する承認
決まった内容を実際に動かすための、最終的な承認です。例えば、顧客への正式な送信、外部への公開、契約や支払いなどが該当します。
これらは、実行したあとに簡単には元に戻せない場合があります。そのため、組織として誰に実行の権限があるのか、どのような確認が必要なのかを明確にしておく必要があります。
③ 把握する承認
責任者として、仕事の内容や進み具合を知っておくための承認です。例えば、担当者が作成した資料について、方向性を変えるつもりはないものの、自分の部署から出るものなので一度は目を通しておきたい、という場合が該当します。
これは決して、責任感のなさや形式主義によって生まれるものではありません。むしろ、責任感の強い人ほど、自分が関わる仕事の内容を知らないまま進むことに不安を感じます。だからこそ、「把握しておきたい」という理由で承認の機会が増えていくのです。
しかし、ここには一つ、考えるべきことがあります。
内容を把握する必要があることと、その人の返事が来るまで仕事を止める必要があることは、必ずしも同じではありません。
例えば、月末に送る顧客向けのお知らせを考えてみます。文面はAIが下書きし、担当者が整え、部長が承認して、送信係が送ります。この流れの中で、部長の承認は何を目的としているのでしょうか。
文面の方向性を判断するなら「決める承認」です。送信を許可する最終的な権限を担っているなら「実行する承認」です。一方、文面を変更することはほとんどなく、自分の部署から出る内容を知っておくために確認しているのであれば、それは「把握する承認」と考えられます。

この3つを区別すると、承認の仕組みを見直すための問いが生まれます。方向性を決める判断や、実行に伴う責任は残す。その一方で、内容を把握することが目的なら、必ずしも返事を待つ仕組みにする必要はないのではないか、という問いです。
ただし、法令や監査、組織の規程によって定められた承認は、この分類だけを理由に省略することはできません。また、下書きの品質が低く、差し戻しが繰り返されている場合は、承認の方法とは別に、作成工程そのものを見直す必要があります。
大切なのは、承認を一律に減らすことではなく、それぞれの目的に合った確認の仕組みを設計することです。
承認の目的を整理すると、もう一つ考えるべきことがあります。それは、なぜ私たちはこれほど多くの承認を必要としているのか、ということです。
3. 立場によって異なる、承認が残る理由
承認が増える理由は、どの立場にもあります。ただ、その中身は立場によって異なります。私たちは、担当者・管理職・経営者というそれぞれの立場から、承認が残る理由を考えています。
担当者は、自分一人で失敗の責任を負うことに不安があり、上司の承認を求めることがあります。承認を得ていれば、何か問題が起きたときにも「確認は取っていた」と説明できます。
管理職は、部下の仕事を知らないまま進めることに不安を感じる場合があります。自分が把握していない仕事について、経営層や顧客から質問されたときに答えられないことを避けたい。そのため、内容を確認しておきたいと考えるのです。
経営者は、会社の名前で外部に出すものに責任を感じ、最終的な承認を自分に集めることがあります。しかし、すべての仕事を自分で確認する仕組みにすると、経営者自身が仕事の進行を止める原因になってしまう場合もあります。
ここで言いたいのは、誰かの性格や責任感が承認を増やしている、ということではありません。担当者が承認を求める背景には、失敗したときの責任が個人に集中する仕組みがあるかもしれません。管理職がすべてを確認しようとするのは、部下の仕事の進み具合を把握する方法が、承認以外に用意されていないからかもしれません。経営者に最終的な判断が集中するのは、実行する権限を誰に任せるのか、組織として整理できていないことも考えられます。
承認が増えるのは、人の不安が多いからではなく、その不安を承認以外の方法で解消する仕組みが整っていないからではないか。私たちは、そう考えています。
例えば、仕事の進み具合が共有されていれば、管理職はすべての工程を承認しなくても状況を把握できます。失敗の責任を個人だけに負わせず、組織として対応する仕組みがあれば、担当者も必要以上に承認を集めずに済むかもしれません。経営者が実行の権限を適切に分担できれば、すべての仕事を自分の確認待ちにする必要もなくなります。
元をたどれば、承認は責任を果たすため、あるいは不安を解消するために設けられたものです。その目的を承認以外の方法でも満たせるなら、必ずしも同じ手順を続ける必要はありません。
承認の仕組みを見直すことは、単に確認の回数を減らすことではなく、誰が何を決め、どのように責任を担うのかを整理することでもあります。
では、必要な確認を残しながら、仕事を止めない仕組みに変えるには、どうすればよいのでしょうか。
4. 仕事を止めずに確認するには?「承認」を「拒否権」に変える方法
私たちは、「把握する承認」を、「承認」から「拒否権」に替えることを勧めています。言葉を変えるだけに見えますが、この2つでは、仕事の進み方が大きく異なります。
通常の承認は、「進めてよいですか」と確認する形です。承認する人から返事が来るまで、仕事は止まります。一方、拒否権は「この内容で進めます。問題があれば期限までに知らせてください」と伝える形です。あらかじめ決めた期限までに異議がなければ、予定通り次の工程へ進みます。
つまり、承認と拒否権では、返事がなかった場合の扱いが異なります。通常の承認では、返事がなければ進めません。拒否権では、事前に合意した条件のもとで、返事がなくても進められます。確認する人が必要に応じて仕事を止められる点は共通していますが、返事を待つ間の仕事の進み方が変わるのです。
確認する機会を残しながら、返事がないことを理由に仕事が止まる状態を変える。これが拒否権方式の基本的な考え方です。

例えば、社内向けのお知らせを作成し、上司に確認してもらう場面を考えてみましょう。これまでは、上司から「問題ありません」と返事が来てから共有していたとします。しかし、上司が内容を把握することだけを目的としているのであれば、事前に確認期限を設け、変更が必要なときだけ連絡をもらう形にできるかもしれません。
「このお知らせは、明日15時に社内へ共有する予定です。修正が必要な場合は、本日17時までにお知らせください。問題がなければ返信は不要です。」
このように伝えることで、確認する側は必要な場合に指摘でき、作成した側も予定に沿って仕事を進めやすくなります。ただし、こうした運用は、あらかじめ確認する人との間で合意し、担当者が必要な品質確認を済ませていることが前提です。
私自身の仕事でも、承認のあり方を見直しました
これまでは、AIが作成した記事のタイトルを私が確認し、選ぶ運用にしていました。しかし、私の確認が遅れることで公開作業を担う仲間が待たされ、仕事が止まってしまうことがありました。
そこで、AIが推奨するタイトルを設定した状態で下書きを共有し、公開を担う仲間が次の作業を進められるようにしました。私にはタイトル候補3つとAIによる推奨理由が共有されます。私が変更したい場合だけ、「2番にして」と伝えれば、タイトルを差し替えられる仕組みです。
私がタイトルを選ぶ権利は残しながら、返事を待たずに仕事を進められるようにしたのです。
承認の方法を変えることで、確認する機会は残しつつ、私の返事がない時間を仲間の待ち時間にしない。判断する権利を残すことと、すべての仕事を自分の承認待ちにすることは、別なのだと気づきました。
すべての承認を拒否権に替えてよいわけではない
ただし、すべての承認を拒否権に替えてよいわけではありません。確認する人の返事を待たずに進める仕組みだからこそ、仕事の内容やリスクに応じた判断が必要です。
私たちは、拒否権への切り替えを検討する際、次の3つを確認することが重要だと考えています。
- 元に戻せること:進めたあとでも修正や差し替えができること。
- 期限が見えること:いつまでに異議を伝えればよいか、関係者が把握できること。
- 決める承認と実行する承認は残すこと:方向性を決める判断や、実行に必要な最終承認は省略しないこと。
例えば、公開前の下書きや社内資料の修正などは、条件によって拒否権方式を検討しやすい業務です。一方、契約や支払い、顧客への正式な通知などは、実行後の取り消しが難しい場合があります。法令や社内規程によって承認が定められている業務も含め、必要な最終承認を安易に省略してはいけません。
また、修正可能な業務であっても、確認する人が期限までに内容を見られる状態にあることが重要です。期限を伝えただけで確認の責任が果たされるわけではありません。誰が何を確認し、問題があった場合にどう対応するのかを、事前に決めておく必要があります。
拒否権に替える目的は、確認を省略することではありません。必要な確認を残しながら、仕事を止める必要のない場面を見極めることです。
では、自分の職場でどの承認から見直せばよいのでしょうか。まずは、普段の仕事でどこに承認待ちが生まれているのか、現状を把握することから始めます。
5. 承認待ちを見える化する3つの物差し
承認の仕組みを見直そうとしても、いきなり組織全体のルールを変えるのは簡単ではありません。まずは、普段の仕事の中で、どのような承認待ちが生まれているのかを書き出してみてください。
私たちが最初に確認したいと考えているのは、次の3つです。
- 承認待ちの件数:今、承認を待っている仕事はいくつあるか。
- 最も長い待ち日数:その中で、最も長く止まっている仕事は何日待っているか。
- 待っている人:その承認が得られないことで、誰の仕事が止まっているか。

この3つのうち、特に着目したいのは「待っている人」です。件数や待ち日数だけでは、確認する人がどれほど忙しいのか、という話になりがちです。しかし、その承認を待っている人が見えると、問題をチーム全体の仕事の流れとして捉えられるようになります。
私自身の記事制作でも、確認漏れによって公開作業を担う仲間が待たされていました。その状況が見えたことで、「私の承認は本当に必要なのか」という問いが生まれました。承認待ちを見える化することは、確認する人の負担を知るだけでなく、その先で誰の仕事が止まっているのかを考えるきっかけにもなります。
もちろん、承認待ちの件数が多いこと自体が問題とは限りません。確認に時間をかけるべき仕事もあれば、法令や組織の規程によって承認が必要な仕事もあります。大切なのは、承認待ちが見える状態になっているか、そして必要のない待ち時間が生まれていないかを確認することです。
私の会社では、送信や公開を待つものを「送信待ちの箱」として一覧にし、毎朝、件数と期限が一目でわかるようにしています。承認する人には「あとで見る」つもりがあり、担当者には「確認を依頼した」つもりがあっても、仕事の状況が共有されていなければ、確認漏れに気づくのが遅れることがあります。
承認待ちを見える化することが、確認漏れや不要な待ち時間を見直す出発点になります。
明日からできる、承認待ちを減らす3ステップ
承認待ちの状況が見えてきたら、次は具体的な改善を考えます。最初からすべての承認を見直す必要はありません。まずは、一つの業務から試してみることをおすすめします。
ステップ1:承認待ちの仕事を一つ選ぶ
現在、承認待ちになっている仕事の中から、見直しやすそうなものを一つ選びます。誰の確認を待っているのか、何日待っているのか、その間に誰の仕事が止まっているのかを整理してみてください。
ステップ2:承認の目的を確認する
選んだ承認が「決める」「実行する」「把握する」のどれに当たるかを考えます。特に、内容を把握するためだけの承認であれば、毎回返事を待つ必要があるのかを確認してみましょう。ただし、実際の承認権限や組織の規程を確認することが前提です。
ステップ3:確認方法を一つ変えてみる
修正が可能で、関係者との合意が取りやすい業務であれば、期限付きの確認方式を試すことができます。
例えば、毎週共有している社内資料について、次のように伝えます。
「この資料は明日15時に共有する予定です。修正が必要な場合は、本日17時までにお知らせください。問題がなければ、予定通り進めます。」
一度試したあとは、承認待ちの時間がどう変わったか、確認漏れや手戻りがなかったかを振り返ります。問題があれば、確認するタイミングや対象の業務を調整します。
大切なのは、承認を減らすこと自体を目標にするのではなく、必要な確認を行いながら、仕事が滞りなく進む状態をつくることです。
このように、一つの仕事から確認方法を見直すことは、明日からでも始められます。承認待ちの現状を把握し、その目的を整理するだけでも、これまで当たり前だと思っていた手順を問い直すきっかけになるはずです。
6. AI時代、人はどこに時間を使うべきか?
ここまでの話は、AIの活用が進む職場で、さらに重要になっていくと私たちは考えています。
AIを使い始めると、文章や資料の下書き、集計など、これまで人が時間をかけていた作業を短時間で進められるようになります。一方、作成できるものが増えても、すべての成果物に従来と同じ承認を求めていれば、確認する人の負担は増えていきます。AIによって仕事をつくる工程が速くなったからこそ、人が確認する工程に仕事が集中してしまう可能性があるのです。
だからこそ、私たちは、人が責任を持つべき承認を「決める」と「実行する」の2つに整理することが重要だと考えています。
方向性を決めること。組織として実行する責任を担うこと。この2つは、AIに技術的に任せられるかどうかだけで判断するのではなく、人が責任を持つべき仕事として位置づけることが大切です。

一方で、「把握する承認」をすべて従来の承認フローに残してしまうと、人はAIが作成した成果物の確認に追われることになります。本当に判断すべき仕事に時間を使うためには、内容を把握する仕組みと、判断や実行を許可する仕組みを分けて考える必要があります。
承認を減らすのは、手を抜くことではありません。人の時間を、本当に必要な判断に集めることです。
承認の仕組みが変われば、担当者は上司の返事を待つだけでなく、自分の役割に応じて仕事を進めやすくなります。管理職は、日々の確認作業だけに追われるのではなく、重要な判断や部下の支援に時間を使えるようになります。そして経営者も、すべての仕事の最終確認を抱え込まず、組織の方向性を考える仕事に集中しやすくなるでしょう。
こうした変化を実現するには、承認の手順だけでなく、誰が何を決め、何を止められるのかという、組織の中で当たり前になっている仕組みまで見直す必要があります。
私たちは、この仕組みを組織の「見えないOS」と捉えています。仕事の進め方や権限の分担、責任の持ち方といった、日々の判断を支える組織文化のことです。
AI時代に重要なのは、誰が承認するかだけでなく、人がどの仕事に責任を持ち、どこに時間を使うのかを設計することです。
まとめ:承認を減らすのではなく、人が判断すべき仕事に時間を使う
AIを活用して仕事の効率を高めても、人の承認を待つことで仕事が止まってしまうことがあります。その原因は、確認する人の忙しさだけではなく、異なる目的の承認をすべて同じ手順で扱っていることにもあるのではないでしょうか。
この記事では、承認を「決める」「実行する」「把握する」の3種類に整理しました。そのうえで、内容を把握することが目的の承認については、条件に応じて「拒否権」に替えるという考え方を紹介しました。
大切なのは、承認をなくすことではありません。必要な確認や判断は残しながら、返事を待つ必要のない場面を見極めることです。
まずは、自分の職場で先週止まっていた仕事を一つ思い浮かべてみてください。その承認は、何かを決めるためのものなのか、実行するためのものなのか、それとも内容を把握するためのものなのか。さらに、承認待ちによって、誰の仕事が止まっているのかを確認してみてください。
次に承認を求められたときには、こんな問いを投げかけてみてください。
「これは、私が判断する必要のある仕事ですか。それとも、内容を把握しておけばよい仕事ですか?」
承認の目的を問い直すことが、仕事の進め方を変える第一歩になります。
AIと人がともに働く時代に、どの仕事を人が担い、どこまでを仕組みで進めるのか。その線引きを考えることは、単なる業務効率化にとどまりません。組織の中で、誰が何を決め、どのように協力して仕事を進めるのかを見直すことにもつながります。
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AIと人の役割分担については、EP39「AI活用|全部AIに任せられるなら、人は何を手元に残すのか?」でも取り上げています。
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▼ EP39
一人ひとりが、「決めること」に時間を使える組織へ
承認の仕組みを見直す第一歩は、誰が何を確認し、何を判断する必要があるのかを整理することです。内容を把握するためだけの承認であれば、必要な条件を整えたうえで、返事を待たずに進める方法を検討できます。
一方で、こうした取り組みを一部門の工夫で終わらせず、組織全体に広げるには、承認の手順だけではなく、権限や責任の分担、情報共有の方法、失敗が起きたときの対応まで考える必要があります。
それらは、個人の心がけだけでは変えられない、組織の仕事の進め方や文化に関わる問題です。
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