「新しいパーパスを発表したのに、現場の反応が薄いんです。」
理念やミッション・ビジョン・バリューを作り直した会社の、経営企画や広報の方から、こうした言葉を聞くことがあります。言葉は時間をかけて磨いた。全社の説明会も開いた。ポスターやカードも配った。それなのに、現場からは「なぜ今なのですか。」「自分の仕事とどう関係があるのですか。」という反応が返ってくる。心当たりはないでしょうか。
打ち手そのものが、間違っているわけではありません。言葉を磨くことも、説明の場を設けることも、必要な一歩です。実際、それをきっかけに社内の会話が変わり始めた会社もあります。一方で、同じように発表しても、しばらくすると誰も口にしなくなってしまうこともあります。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
この記事では、新しい理念が現場で他人事になってしまう背景を、「決める場にいた人」と「いなかった人」の違いから考えます。そのうえで、理念を現場へ届けるために何が必要なのかを整理し、実際の場づくりや役割・時間の設計、次の説明会から試せる小さな一手まで掘り下げていきます。
言葉そのものをもう一度作り直す前に、まずは「いま、何をどう伝えているか」を振り返るところから始めてみましょう。
1. なぜ、時間をかけて作った理念が「他人事」になるのか
私が会社員2年目のころ、社員証の裏に入れるカードを配られたことがあります。会社が大切にする価値観が、英語で何項目か並んでいました。配られたので、言われたとおりに社員証へ入れました。ただ、正直に言えば、当時の私は一つも覚えていませんでした。
なぜ、このタイミングで必要なのか。どこで、誰が、何を考えて決めたのか。そうした話は、少なくとも私のところには降りてきていませんでした。「配られたから入れておく。」それが、当時の私の理解のすべてでした。
もちろん、これは私一人の経験であり、この出来事だけから一般的な因果関係を示せるものではありません。ただ、現在クライアントの中で理念浸透に取り組む方々と話していると、似た構図に出会うことがあります。発表はされた。資料も配られた。しかし、「なぜ今なのか」「なぜこの言葉なのか」までは、十分に共有されていない。ここから先は、そうした経験や観察をもとにしたBulldozerとしての見立てです。
会話にすると、たとえばこんな場面です。「新しいパーパス、見た。」「見たよ。で、何が変わるの。」「さあ。とりあえず来月から名刺に入るらしいよ。」言葉そのものを否定しているわけではありません。しかし、会話はそこで終わってしまいます。
一方で、自分の会社がこれからどこへ向かおうとしているのかを知りたい人は、少なくないように感じます。情報が十分に降りてこないからこそ、「何が起きているのだろう。」と周囲に尋ねることもある。関心がないから他人事になるのではなく、関心はあるのに、自分とのつながりを見いだせない。 ここに、理念浸透を考えるうえでの一つの結び目があるのではないでしょうか。
では、そのつながりは、どこで途切れているのでしょうか。
2. 経営と現場のあいだで、何が抜け落ちているのか
経営と現場では、そもそも見ている景色が違います。この先の会社を考える部門と、足元の売上をつくる部門とでは、日々向き合っている課題も、意思決定の時間軸も異なります。山頂から見えている景色と、ふもとで営まれている生活は、同じ山にあっても同じではありません。
この前提に立つと、決めたことが現場へ届くまでの間には、いくつかの「抜け落ちやすい場所」があるように見えます。私たちは、実務の中で大きく3つに整理しています。これは学術的な分類ではなく、理念浸透や組織変革の現場を見るための整理です。
- 立場の違い:経営が見ている外部環境や危機感が、現場の日常までは伝わりにくい
- 途中を出せない空気:進行中のものを社内に出すことへのためらいが、決定までのプロセスを見えにくくする
- 決めた人の関心の移り先:決定を担った人が次の「0→1」へ向かい、その後を届ける役割が空白になる

ひとつめは、立場の違いです。会社の規模が大きくなり、経営と現場の距離が広がるほど、経営側で共有されている外部環境の変化や問題意識が、そのまま事業部の日常まで流れてくるとは限りません。経営側には「いま変える理由」が見えていても、現場から見れば、ある日突然、新しい言葉が現れたように感じることがあります。
ふたつめは、途中を出せない空気です。特に大きな組織では、まだ決まっていないものを社内へ出すことに慎重になる場面があります。しかし、決定に至るまでの迷いや議論は、まさにその「途中」にあります。完成してから初めて共有するのであれば、現場に届くのは完成した言葉だけになり、その背景は見えにくくなります。
みっつめは、決めた人の関心の移り先です。理念を決めた人たちは、決定した瞬間から次の課題へ向かいます。0から1を生み出す仕事と、それを組織全体へ広げていく仕事では、求められる役割も異なります。「決める人」と「届ける人」が自然に同じになるとは限らない。だからこそ、決めた後を誰が担うのかまで設計する必要があります。
この3つは、「なぜ浸透しないのか」をすべて説明するためのものではありません。あくまで、決定から現場へ届くまでの間で、何が抜け落ちやすいのかを見るための整理です。また、そもそも従業員に理念を浸透させること自体を経営が望んでいないケースもあります。その場合は伝え方ではなく、経営の意思そのものに関わるため、この3つとは分けて考える必要があります。
では、こうした場所で何かが抜け落ちた結果、決める場にいた人と、いなかった人の間には、どのような差が生まれるのでしょうか。
3. 同じ言葉なのに、なぜ受け取り方が変わるのか
ドラマを思い浮かべてみてください。1話を見たあと、2話から5話を飛ばして、いきなり6話を見せられたとします。登場人物の関係がわからない。なぜその人が怒っているのかもわからない。画面の中で大きな出来事が起きていても、「そうなんだ。」で終わってしまうかもしれません。
新しい理念を受け取る現場にも、これと似たことが起きているのではないでしょうか。決める場にいた人にとって、新しい言葉は、何か月もの議論や迷いを経てたどり着いた「6話」です。一方、決める場にいなかった人にとっては、2話から5話を知らないまま、突然6話だけを渡されることになります。
同じ言葉でも、そこに至る経緯を知っている人には「結末」に見え、知らない人には「突然現れたもの」に見える。 私たちは、この差が理念を自分ごととして捉えられるかどうかに関係しているのではないか、と考えています。

ここで、現場に渡すものを「結果」と「経緯」の2つに分けてみます。「結果」は、決定されたパーパスやMVV、その言葉の定義、今後の施策などです。一方の「経緯」は、決定までの議事録をすべて公開することではありません。
私たちが特に重要だと考えているのは、次の2つです。
- なぜ:なぜ今、このタイミングなのか
- どうやって・何を:その目的に対して、なぜこの方法、この中身を選んだのか
この2つがあることで、目の前に現れた新しい言葉を、それまでの会社の歩みや、これから向かおうとしている方向とつなげて捉えやすくなります。
ただし、ここでもう一つ考えたいことがあります。この「経緯」を資料にまとめ、社内報に載せ、説明会で話せば、それで十分なのでしょうか。
言葉として情報を受け取ることと、そこに至るまでの考え方を自分自身でたどることは、同じではありません。理念を「知っている」状態から「自分の仕事とつながっている」状態へ進むには、情報を渡すだけでは足りないのかもしれません。
では、「伝える」の次に何ができるのでしょうか。次章では、Bulldozerが大切にしている「追体験」という考え方から、決めた場にいなかった人へ経緯を渡す方法を考えていきます。
4. 「伝える」だけでは届かない。次にできること
決めた経緯を届ける方法として、まず考えられるのは「語る」ことです。トップが自分の言葉で話す。決めた人たちが対談の形で、どんな議論があり、どこで揺れ、なぜその言葉にたどり着いたのかを話す。私たちも、経緯を届けるための大切な一歩だと考えています。
ただ、「語る」だけでは、どうしても一方通行になりやすいという側面があります。聞き手は受け取る側にとどまり、自分自身がその物語の中にいる感覚までは生まれにくい。そこで私たちが大切にしているのが、「追体験」という考え方です。
ここでいう追体験とは、創業者の苦労話を聞くことだけではありません。こういう背景があり、こういう意図があったから、この意思決定になり、いまこの事業が動いている。その筋道を、ただ説明として聞くのではなく、自分自身でたどり直していくことです。
決める場の真ん中にいなくても、決めた経緯をたどることはできる。 そのための場をつくることが、理念を「知らされた言葉」から、自分たちにつながる言葉へ変えていく一つの方法だと考えています。
支援事例|ある物流企業で、10年前の意思決定をたどり直した
たとえば、物流業界の大手企業で、ある事業を次の世代に引き継ぐ場面を支援したことがあります。その事業は10年ほど前に立ち上がったもので、当時の意思決定だけを説明しても、なかなか自分ごとにはなりませんでした。
そこで、その会社の成り立ちを戦後までさかのぼり、物流の歴史と世の中の変化を重ねながら、「なぜ10年前にその判断に至ったのか」を参加者自身がたどる場を設けました。すると、それまで点として捉えられていた出来事が、一つの流れとしてつながっていく様子が見られました。自分たちが、いまどの物語の何話目にいるのか。そう捉え直すことで、現在の事業を過去から続く意思決定の延長線上で考えられるようになったのだと思います。
もちろん、これは私たちが関わった一つの現場で起きたことであり、そのまま一般化できるものではありません。ただ、「語る」だけでなく「たどる」ところまで場を設計したときに起きた変化として、一つの示唆があるように感じています。
ここでもう一つ、大切にしたいことがあります。理念を全員で決めれば、自分ごとになるとは限らないということです。組織が大きくなるほど、すべての人が決定の場に参加することは現実的ではありません。また、多くの人で決めることと、その会社らしい言葉が生まれることも、必ずしも同じではありません。
だからこそ、全員を「決める人」にすることだけを目指すのではなく、決める場にいなかった人が、あとからその経緯をたどれる状態をつくる。 ここに、理念浸透を考えるうえでの重要な視点があります。
では、その「たどる場」は、実際にどう設計すればよいのでしょうか。
5. 1,000人の会社でも、20人から始められる
「20人集めても、全社の2%にしかならない。」
大きな会社で対話の場を設ける話をすると、こうした計算が気になることがあります。100人の会社の20人なら5分の1ですが、1,000人の会社では50分の1。割合だけを見れば、確かに小さくなります。
ただ、こうした場の意味は、参加率だけでは捉えきれないように思います。現場に十分な情報が降りてきていないときほど、「会社で何が起きているのか」「これからどこへ向かうのか」を知りたい人はいます。場に参加した人が部署へ戻れば、「どうだった。」と周囲から聞かれることもあるでしょう。そこで自分が見聞きしたことを話せれば、最初の20人以外にも経緯が伝わっていく可能性があります。
この最初の集まりは、いわば「雪だるまの最初の塊」です。最初から全員へ同じ密度で届けようとするのではなく、まずは経緯を理解し、自分の言葉で周囲へ伝えられる人をつくる。そこから少しずつ対話を広げていくという考え方です。

では、単に20人を集めればよいのでしょうか。私たちが場を設計するときには、特に3つのポイントを見ています。
- 誰が来るか:各部署から、戻った先で周囲との会話が生まれやすい人に参加してもらう
- 何を持ち帰れるか:どこまでの途中経過を持ち帰り、周囲と共有してよいのかをあらかじめ決めておく
- 何を答えられるか:「なぜ今なのか」「なぜこの方法・この中身なのか」を、自分の言葉で説明できる状態を目指す
ひとつめは、人選です。ここで見るのは、必ずしも役職の高さだけではありません。その人が部署へ戻ったとき、周囲との会話が生まれるかどうか。組織の中で経緯をつないでいくことを考えると、この視点が重要になります。
ふたつめは、何を持ち帰ってよいのかを明確にすることです。せっかく経緯を知っても、「これはどこまで話してよいのだろう。」と参加者が迷えば、そこで情報は止まります。途中経過を共有するのであれば、何をどこまで話してよいのかを、場の設計段階で決めておく必要があります。
みっつめは、参加者が何を自分の言葉で話せるようになるかです。完成した説明文を覚えてもらうことが目的ではありません。第3章で整理した「なぜ今なのか」と「なぜこの方法・この中身なのか」を、自分なりに理解し、周囲との会話の中で説明できる状態を目指します。
場の価値は、その場で何を話したかだけではなく、そこから出ていく人が何を持ち帰れるかで変わります。
ただし、この3つを設計しても、そもそも対話するための時間が確保されていなければ、実行には移せません。では、その時間は、誰の計画の中に置けばよいのでしょうか。
6. 浸透を「余った時間の仕事」にしないために
理念浸透や対話の重要性を理解していても、実務の中では「時間が取れない」という壁にぶつかります。特にプロジェクト型で動く組織では、この問題が起こりやすいように見えます。
ゴールが明確で、納品や成果物に力を注ぐプロジェクトでは、その最中に理念について対話したり、組織の背景をたどったりする時間を確保するのは簡単ではありません。私自身も、コンサルティングのプロジェクトに身を置いていたころは、プロジェクトの最中にそうした時間を取る難しさを感じていました。現実的に考えれば、プロジェクトとプロジェクトの間など、あらかじめ時間を確保できる場所を設計する必要があります。
ここには、経営としての判断も必要になります。対話や追体験のために時間を使えば、その時間を直接的な売上やプロジェクトの稼働に充てることはできません。一方で、新しい理念を組織に入れた状態で次の仕事を始めたいのであれば、その時間を単なる「空き時間」ではなく、仕事を始める前の準備として捉えることもできます。
これは、仕事を始める前の「準備運動」と考えることもできます。たとえば何百日という年間の稼働のうち、5日、難しければ3日を、理念や組織の背景を理解する時間としてあらかじめ置いておく。ここで重要なのは「3日や5日が正解」ということではありません。
余裕ができたら実施するのではなく、最初から必要な時間として計画に入れる。
そう考えなければ、目の前の業務が忙しくなったとき、理念浸透のための時間は後回しになりやすくなります。
そして、時間だけでなく、役割も同じです。理念を決めた人たちは、決定が終われば次の「0→1」へ向かいます。だからこそ、経営企画や社内広報などが、「決めたものをどう現場へ渡すのか」を担う役割として最初から置かれているかどうかが重要になります。
理念を決めることと、理念が組織で使われる状態をつくることは、別の仕事です。
後者にも担当者と時間が必要だと考えれば、理念浸透は「本業が落ち着いたら取り組む仕事」ではなく、組織変革そのものの一部として計画できます。
7. 計画が変わっても、組織に残るものは何か
ここまで、「他人事」になってしまう構造から、経緯を追体験する場、その場から周囲へ伝えていく人、さらに時間と役割の設計まで見てきました。
では、なぜ今、ここまでして「なぜ」を組織で共有する必要があるのでしょうか。
「VUCAの時代」と言われるようになって、すでに長い時間が経ちました。不確実性が高まり、数年先を正確に見通すことが難しい。そうした認識自体は、いまでは珍しいものではありません。
一方で、企業の計画の立て方を考えると、その影響は小さくありません。3か年の計画を一本立て、その道筋に沿って進む。それだけでは、途中で起きる環境の変化を捉えにくい場面も増えているのではないでしょうか。
私たちはこれから、経営企画には異なる時間軸を見る2つの視点が、より重要になると考えています。
ひとつは、会社が長期的にどこへ向かうのかを見る視点。もうひとつは、足元の状況を捉え、今年何をするのかを見る視点です。
たとえるなら、経営企画には「2本の望遠鏡」が必要になるということです。

遠くを見る望遠鏡で考えるのは、「この会社は、これからどこへ向かうのか」という問いです。まだ存在しない未来を想像し、どんな社会や事業をつくっていきたいのかを考える。ここでは、既存の情報を分析するだけではなく、自分たちで答えをつくる力が求められます。
もう一本の望遠鏡で見るのは、より足元の世界です。市場で何が起きているのか。顧客はどう変化しているのか。今年、何を優先するのか。こちらでは、情報を集め、分析し、現在地をできるだけ正確に捉える力が重要になります。
この2つは、どちらか一方を選ぶものではありません。遠くの方向だけを見ていても、今日の一歩は決まりません。一方で、足元の変化だけを追い続けていると、「そもそも自分たちはどこへ向かっているのか」が見えにくくなります。
そして、この2つの時間軸を行き来するようになると、理念の役割も少し違って見えてきます。
足元の計画は、環境によって変わります。施策も変わります。場合によっては、昨日まで正しいと考えていた方法を手放すこともあるでしょう。
だからこそ、変わる「計画」だけではなく、その奥にある「なぜ」を組織で共有しておく意味が生まれます。
「なぜ今、この方向へ進もうとしているのか」が共有されていれば、具体的な施策が変わったときにも、現場はその背景に立ち戻って考えることができます。
新しいパーパスを発表するとき、現場へ「結果」だけを渡す。すると、その言葉は環境が変わるたびに、新しく覚えなければならないメッセージの一つになりかねません。
一方で、「なぜ今なのか」「なぜこの方向なのか」という経緯まで共有されていれば、その言葉は会社がどこへ向かおうとしているのかを考える手がかりになります。
理念を浸透させる目的は、全員が同じ言葉を暗記することだけではありません。
変化の中で一人ひとりが判断するときに、立ち戻れる共通の起点をつくること。
そこまでできて初めて、理念は「経営が決めた言葉」から、「自分たちが使う言葉」へ変わっていくのではないでしょうか。
8. 次の説明会で、最初の5分から変えてみる
ここまでの話を、自社ですべて実践しようとすると、大きな取り組みに見えるかもしれません。対話の場をつくる。参加者を選ぶ。経緯を整理する。時間を確保する。経営企画や広報の役割を定める。組織全体へ広げるには、確かに設計が必要です。
ただ、最初から大きな仕組みをつくる必要はありません。
次に理念や方針について説明する機会があるなら、まず変えられることがあります。
最初の5分を、「なぜ今なのか」の話に使ってみてください。
これまでの説明会が、たとえば「新しいパーパスはこれです。」から始まっていたとします。そこから言葉の意味を説明し、今後の施策を説明する。それ自体は必要ですが、第1〜3章で見てきた構造を踏まえると、現場にはいきなり「6話」が渡されている可能性があります。
そこで、順番を少し変えます。
- いま、会社を取り巻く環境で何が起きているのか
- その中で、私たちは何に悩み、何を変える必要があると考えたのか
- その結果として、なぜこの言葉、この方向にたどり着いたのか
この順番で話したあとに、新しい理念を提示する。伝える情報を大幅に増やすというより、すでに持っている情報の順番を変えるイメージです。
まず変えるのは、説明の量ではなく、説明の順番です。
5分で理念浸透が完了するわけではありません。ただ、結果だけを伝える状態から、経緯も渡す状態へ移る最初の一歩にはできます。
そこから、「決めた人が語る場をつくれないか」「20人からでも追体験する場を始められないか」「参加した人が部署へ戻ったあと、周囲に話せる状態をつくれないか」と、一つずつ広げていけばよいのです。
まとめ|決める場にいなかった人に、経緯をたどる場を
新しい理念を発表したのに、現場では「自分には関係がない」と受け取られてしまう。その背景には、現場の関心の低さだけではなく、決める側と受け取る側の間にある情報や体験の差が関係している可能性があります。
決める場にいた人は、何度も議論し、迷い、選択肢を捨てながら、最後の言葉へたどり着いています。一方、決める場にいなかった人が最初に見るのは、その「結果」です。
だからこそ、現場へ渡したいのは、完成した言葉だけではありません。
「なぜ今なのか」と「なぜこの方法・この中身なのか」。決めた経緯を、あとからでもたどれる状態をつくること。
そのために、トップや決定者が語ることもできます。少人数で追体験する場をつくることもできます。そこへ参加した人が周囲へ伝えられるようにすることもできます。そして、それらを「時間が余ったらやる仕事」にせず、必要な時間と役割として計画に入れておくことも重要です。
計画や施策は、環境に合わせて変わっていきます。だからこそ、そのたびに新しい指示を覚えてもらうだけではなく、「私たちはなぜこちらへ向かうのか」を共有しておく。
理念が本当に組織の中で生きるのは、社員がその言葉を覚えたときではなく、変化に直面したときに、その言葉へ立ち戻って考えられるようになったときなのかもしれません。
まずは、次の説明会の最初の5分から始めてみてください。決まった言葉を説明する前に、「なぜ今なのか」を話す。その小さな順番の変更から、決めた人と現場の間にある距離を縮めていけるはずです。
関連記事
① 組織課題|内容はいいものなのに、なぜ現場に伝わらないのか ─「届け方」までが仕事
② 組織変革|新しい仕組みを入れても、なぜ現場は動かないのか ─施策の下にある「土台」
③ ミドルマネジメント|丁寧に説明しても、なぜ現場は動かない? ─会議に足りない「出番」のつくり方
Podcast
この記事のもとになった回では、新しいパーパスが「上滑りの言葉」になりかけるという悩みから始まり、途中を出せない大企業の空気、決めた人と届ける人の分かれ目、そして後半の「社長に推しになってもらう」という角度まで、49分かけて話しています。
EP44の音源はこちら
一人ひとりが、決めた経緯をたどれる組織へ
次の説明会の「最初の5分」を変えるところから、理念の届け方は見直せます。一方で、決めた経緯が自然に組織を巡り、社員一人ひとりが会社の方向性と自分の仕事をつなげて考えられる状態をつくるには、コミュニケーション施策だけでは十分ではありません。
時間の使い方、経営企画や広報の役割、対話の場、日々の行動まで含めて設計する必要があります。
Bulldozerは、理念を「掲げる言葉」で終わらせず、組織の中で判断や行動につながる状態をつくるところまで支援しています。
他のおすすめ記事をみる
Contact
資料のダウンロード・
お問い合わせはこちらへ
「アート思考、良さそうだけどピンときてない・・・」「うちの組織にどう適用したらいいかわからない」
そう思うのは自然なことです。どんなことでもお気軽にご相談ください。