他企業様のワークショップの事例をみる
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東急バス株式会社様
経営層から現場まで全社一丸!職種も超えて本音や希望を呼応させ、魂の入った新スローガンを策定。ひとりひとりが会社の未来に納得感や愛着を持ち、パーパスを体現する文化も併せて醸成。
ブランディング 公共交通
株式会社東急エージェンシー ゆえん様
POINT1 右脳を刺激するワークショップが感情を呼び覚まし仕事の熱量を引き出す
POINT2 才能のアクセルを踏み、“できるか”ではなく“やりたい”で決める
POINT3 変化を楽しめる人が増えれば、より楽しくて面白い社会になる
「毎日現業に追われていて、未来を考えることに手が回らない」
「もっと主体的に動いてほしい」
「仕事に意義を感じるが、もっと自分にできることがあると思う」
――そんな悩みを抱えるリーダーにこそ読んでいただきたい記事です。
本記事は、株式会社東急エージェンシーで新規事業「ゆえん」を立ち上げたファウンダー/ファシリテーター(コンサルタント)・佐々木留美氏と、弊社代表・尾和恵美加による対談です。
佐々木氏は2023年、弊社のワークショップに参加。その後2024年には自身が立ち上げた新規事業である「ゆえん」の外部パートナーとして弊社を選んでくださいました。
本対談では、弊社代表・尾和との出会いやワークショップで得た気づき、そして共同プロジェクトを通じて実感した新しい価値を生み出すために必要な「型に捉われない考え方」やワークショップが引き出す「内面の変化」について語ります。
◾️ゆえん
2024年に活動を開始した東急エージェンシーのブランドコンサルティングユニット。 企業や事業の“らしさ”や“存在意義”を深く掘り下げブランディングの構築・実践・浸透までを並⾛⽀援している。
◾️佐々木留美氏
株式会社東急エージェンシーでマーケティング・コミュニケーション戦略立案業務に従事し、メーカーの事業企画部門へ転職。その後、東急エージェンシーに復職しコミュニケーション戦略部門から営業企画部門へ。その間2008年からブランド策定サービス「V-WAYS®」のファシリテーターとして顧客のブランディング支援とワークショップの実践を積む。2024年同社新規事業としてブランドコンサルティングユニット「ゆえん」を創設。
尾和:Bulldozerを知った経緯や第一印象を教えていただけますか?
佐々木留美氏(以下、佐々木):まず、経緯としては上司が尾和さんのワークショップを実際に体験して紹介してくれたのがきっかけでした。もともとブランディングの仕事をしていて、私自身、ブランドのオリジンを探るようなワークを行っていたのですが、企業の過去を振り返るという意味では尾和さんのオリジンにさかのぼるワークショップに親和性がありました。ただ、Bulldozerさんのアプローチは、企業のブランドだけでなく、個人の過去やオリジンを重ねていくという点が面白いと思いました。
尾和:ありがとうございます。最初にどんな期待感を持っていただきましたか?
佐々木:私たちは普段、右脳と左脳両方を使うワークショップをしていますが、どうしても左脳で考える場面も多く、感情や熱量が高まりにくいタイミングがあります。「こういうことやりたかったんだ」「こういうことが楽しいんだ」という感情を呼び起こすことができる右脳的なアプローチに魅力を感じていました。
尾和:最初にご依頼いただいたプロジェクトでは、現場の中堅層の皆さまから役員層へ提案を上げるという構造でした。会社の未来について全員が熱量を持って主体的に考えるというところを期待されていたという理解で合っていますか?
佐々木:そうですね。参加したメンバーが30〜40代のまさに現場の最前線で頑張っている人たちで、その人たちが「自分でどうにかしよう」、「自分たちで何とかしよう」という実践側の覚悟や気持ちが固まれば、プロジェクトを超えて会社の課題解決につながるんだろうなと思いました。そうした人たちが受け身から実践する側になるきっかけとして、ワークショップが最適だと思いました。また弊社の場合、クライアントワークを優先せざるを得ないことが多く、社内で定例的に集まること自体がスケジュール的に難しいため、定例会形式の進め方だと間違いなくプロジェクトが進まないという予想ができました。具体的には、事前に調べ物をして、資料を作り、それを発表してシェアするというプロセスを踏む時間は、現実的に確保できないということです。参加メンバーは瞬発力のある人が多いので、事前準備や資料作成に時間をかけるよりも、その場で集中して一気にアウトプットを出す方が合っていると感じていました。また、定例会などでありがちな、特定の人に発言権や負荷が集中する進め方もフェアではないと思っていて、その意味でもワークショップという形式は非常に理にかなっていました。
尾和:短時間で意思決定していく場の設計というのは、私たちのノウハウの一つなので、そういったところを評価いただけたのは嬉しいですし、良かったです。特徴的だったワークショップの設計はありましたか?
佐々木:特徴的なのは、全員でディスカッションをするフィッシュボール*だと思います。ワークショップに参加したのは実務経験豊富なメンバーかつ、自分の考えを伝えたいという欲求が強い人が多かったと思います。フィッシュボール*にはゲーム性があり、自分が話すためには自分で椅子に座りに行かなければいけないというルールだったので楽しんで取り組んでくれたと思います。それによって、各自が伝えたい意見を忖度なく発言でき、アイディアとしてまとめていくことができました。
尾和:あの時、Bulldozerのワークの独自フレームワーク「時空間の振り子」を使って、歴史を振り返って、未来を考えて、実際にプロジェクトを実践していただきましたよね。他の参加者の方を見てみて、何か変化を感じることはありましたか?
佐々木:参加メンバーの中にはマネジメントの立場になった人がいますが、あのワークショップの議論を経て「社内で対処しなくてはいけないこと」や「この領域のこの情報を知るべき」など問題意識がよりクリアになったのではないでしょうか。
*フィッシュボール(Fishbowl):中央の椅子に座った“話す人”と、その周囲で“観察する人”が囲む形で行うディスカッション手法。話したい人が中央で話し、他に話したい人がいたら抜けるという出入り自由な形式で、主観と客観を行き来しながら進行します。その場の参加者全員が対話に関わることで、多様な視点やアイデアが自然に生まれるのが特徴です。
尾和:新事業としてブランディングの事業を立ち上げて1年ですね。
佐々木:はい、1年経ちました。おかげさまで。
尾和:新事業を提案した際や事業を動かしていく中で、Bulldozerのワークショップが役立った点はありますか?
佐々木:当初は元々あるブランディングサービスをそのまま新事業にどう生かすか、と考えていました。でも、尾和さんのワークショップだったり、お話しする中でいろいろな刺激を受けて、「必ずしも型にはめる必要はない」と考えるようになりました。課題に対してきちんとアウトプットが出せれば、それで事業としては成立すると思いました。ブランディング支援のひな型は用意していますが、そこからはカスタマイズしたり、チームの構成や課題感を見て柔軟に変えたりしています。そういった意味で、手段やアプローチの幅が広がり、有難かったです。
尾和:そう言っていただけて嬉しいです。もし、ブレークスルーだったと思われるポイントがあれば教えていただけますか?ピンポイントというより、全体としての体験かもしれないですが。
佐々木:最近では、クライアントが、自前でワークショップを実施するケースが増えています。ただ、多くの場合は「通常の会議を少し拡大したもの」という認識にとどまっていて、形式や進め方自体は従来の会議と大きく変わらないことが多いと感じています。そうした中で、Bulldozerさんでは、形式そのものを大胆に変えています。たとえば導入で「自分のオリジンを振り返る」といったアプローチを取り入れることは非常に有効だと思っています。通常、部門内で自分史を振り返る機会はほとんどなく、あったとしてもキャリア開発や人事施策の一環として行われることが一般的です。だから事業の未来や会社のありたい姿を考える場面で「自分史を起点にする」というアプローチは視点を広げる意味ですごく良いと思っています。
このプロセスを通じて、「あなたの仕事の本質は何か?」「その仕事を通じて何を実現したいのか?」といった本質的な問いに立ち返ることができます。そういった意味でも、ワークショップに対する固定観念を崩し、視座を一段階引き上げるきっかけになったと感じます。
尾和:とても嬉しいです。まさに会社の自分ごと化は、私たちのテーマの一つであり、常に大切にしている視点です。私たちのミッションは「感動の総量を増やす」ですが、そのために必要な「才能を爆発させる」ということを、佐々木さんはまさに体現されていますね。そして、その姿勢で提案された新事業「ゆえん」が事業化1号として採択されたというのは本当にすごいことですよね。佐々木さんの多大な努力と情熱によって実現され、私たちも大変嬉しいです。そして、もし私たちの取り組みが、少しでもその一助となれていたのだとしたら光栄に思います。
佐々木:そうですね。尾和さんとの出会いは、個人的にも大きなものでしたし、嬉しく思っています。「やらない」と自分で決めて動かないことって、できる・できないの問題とはちょっと違っていて。結局、「やらない」と決めているのは自分自身なんですよね。でも尾和さんは、そこに対して「やればいいじゃない」と自然に背中を押してくれるような、解放のエネルギーを持っている方だなと感じます。そして何より、自ら率先して行動している姿を見せてくださるので、「できない」「やらない」と自分に言い訳している場合じゃないなって思うんです。「それって、本当にやらなくていいことなの?」「やりたいなら、やればいいのに」ってポーンと勢いをつけてくれる、そんな尾和さんのエネルギーが本当にすごいなと思います。
尾和:それは嬉しいです。ありがとうございます。私自身もそうなんですが、ブレークスルーのきっかけになる瞬間とか、逆にボトルネックを感じている時って、自分で“常識”を作ってしまっていることが多いなと思うんです。「これはこうだからできない」「ここから先は無理」といった、自分自身で引いた線に縛られてしまっている。でも、今って、ある程度仕組みが整っている時代だからこそ、そういった“無意識の制限”を外していくことが、すごく大事なんじゃないかと感じています。
佐々木:これまでは組織や会社の中にある既存のフレームに、いかにうまくはまっていくか、ということが求められてきたと思います。でも今は、もうそれだけでは立ち行かない時代になってきていて、むしろ個人が「フレームの中でどう動くか」ではなく、「その枠をどう広げていくか」「新しい仕組みをどう作っていけるか」といった視点が必要になってきていると思います。そういうときに、今ある枠組みの中で収まっていればいいやとブレーキを踏んでしまうのは、すごくもったいないと感じます。
尾和:今の話を聞いていて思い出したのですが、最近、1970年代の『宇宙戦艦ヤマト』にハマっています。昔の作品なんですけど、改めて観るとすごく考えさせられるんですよね。シーズン2だったと思うのですが、宇宙で何か異常なことが起きて何者かによって地球が攻撃されるかもしれないという状況で、「何かがおかしい、絶対に調べに行くべきだ」とヤマトのクルーたちは感じます。でも上層部からは、「お前たちが出る必要はない」と止められてしまう。いわば組織の命令に逆らう形になるんですが、それでも彼らはゲリラ的にメンバーを集めて、かつてのヤマトを再出発させるんですね。その行動が結果的に功を奏して、地球が壊滅的になるような攻撃を受けるのを事前に防ぐことができた。そんな展開があるんです。これが今の時代だったら、「ルールを守らないと」「枠からはみ出てはいけない」といった空気に押されて、地球から出ずに終わっていたかもしれないなと思って。で、第3話くらいで地球滅亡、みたいな(笑)。でもあの頃のヤマトは、型を破ってでも動いて状況を打破する価値を描いていた。今こそ思い出すべきメッセージのような気がするんです。時代の流れで型を破るのが難しくなっているんですかね。
佐々木:そうですね。多分、本人たちも「もう、昔の考え方のままでは通用しない」ということには気付いているんだと思います。でも、ずっと「型から外れないように」と言われて育ってきた人たちに対して、急に「これからは型を外して動いてください」と言っても、それってやっぱり簡単なことじゃないと思うんです。
尾和:そもそも「変わること」に対して怖さを感じる人の方が圧倒的に多いですね。特に日本では、その傾向が強いように感じています。
佐々木:型から外れない方が、正直なところ“楽”なんですよね。私自身で言えば、既存の業務を回していれば大きな問題はなかったですし、新規事業なんて立ち上げない方が楽だったんです。時間的にも、精神的にも。でも…じゃあそれで本当に楽しいのか?って考えたときに、やっぱり違うなと思ったんですよね。
尾和:同じ漢字だけど全然違いますね。「楽」と「楽しい」って。
佐々木:そうなんですよね。既存の組織の中で、与えられたことを着実にこなしていれば、あまり深く考えなくても回せることって実際たくさんあると思います。しかも、それで毎月きちんと給料がもらえるのであれば、「まあ、それでいいか」と思えてしまうのも事実です。実際、その方が気持ちの面でも平穏でいられますし、ある程度キャリアを積んでしまえば、難しいことを求められる場面も減っていきます。そういう意味では、楽に続けることはできるんですよね。でも、それって本当にいつまで続けられるのか考えたときに「このままじゃいけない」と気づく。気づいた人間から動くしかないと思うんです。会社の課題や、見えてくる現実がある中で、組織そのものを一気に変えるのは簡単ではない。大きな組織であればあるほど、なおさらです。だからこそ、自分にできる範囲から、まずは変えていくしかない。そういう、ある種の“覚悟”みたいなものが必要だと感じています。
尾和:それは究極の”世界の自分ごと化”なんじゃないですか?
佐々木:世界を自分のこととして考えるというよりは、“社会の中の自分”を優先してきた結果だったのかもしれないなと思うんです。自分本位の感覚で動いてみたら、結果的にこうなったということかもしれない。正直、どちらが正しいのかは分からないですし、会社側からしてみたら「本当はこういう部門を任せたかった」「これをやってほしかった」といった要望はあったかもしれません。でも私は私のやりたいことをはっきり伝えて新しく部門を立ち上げました。組織の中で”勝手な人間”だと思われることもあるかもしれないけれど、それはもう仕方がないと、そういう覚悟でやってきました。とはいえ、会社の人たちは私のスキルや個性も含めて理解をして応援してくれているので、 じゃあ失敗したら今の会社でのキャリアは終わるのかとかそんな不安はなく、伸び伸びとやらせてもらってるので、本当にありがたいです。
尾和:これまで構築されてきた周りの方との信頼関係があってのことですね。もっといろんな人が積極的にチャレンジしていくと楽しい世の中になると思いますよね。
佐々木:そうですね。ただ、本当に「変わることが怖い」っていう気持ちはよく分かりますし、実際そう感じる人のほうが多いと思っておかないといけないなと思います。たとえばブランディングの仕事でも、リブランディングをするとなれば、何かしらの変化が生まれますよね。そうすると、当然ながらそこには抵抗感が出たり、なかなか馴染めなかったりすることもあります。リブランディングを成功させるには、「なぜ今変わる必要があるのか」を丁寧に伝えて、関係者に納得してもらうことが大切です。多くの日本企業の場合、一度納得が得られれば、その決定に対して真摯に取り組み、しっかりと行動に移せる力があります。だからこそ、「変わりたくない」という気持ちにもきちんと向き合いながら、プロジェクトを設計することが大切です。変化に前向きな人を上手く活かしていくようなマネジメントの視点も欠かせません。あとは、やっぱり年齢的な要素もあると思っていて。変わるには“体力”というか、どちらかというと“気力”が必要なんですよね。実際、私自身も「本当に変えられるかな…」と、ブレーキを踏んでしまうような感覚があったので、その気持ちはすごくよく分かります。だから、そういった気力の部分はやっぱり無視できないなと感じます。
尾和:確かに、気力って“心の若さ”だと思いますが、結局はワクワクする気持ちをどれだけ大切にできるか。そこが大きいのかなと思います。では次に、ゆえんが立ち上がってからのお話を伺えたらと思います。私たちをパートナーとして選んでいただき、その後もご一緒にお仕事をさせていただく機会をいただけたこと、本当にありがたく思っています。
選んでくださった理由や背景を伺えたら嬉しいです。また、実際にご一緒する中で、こういう部分がお客様の課題にフィットしていると思うことや、一緒に取り組むことで価値が強化されていると感じることはありますか?
佐々木:アート思考のワークショップにおけるアプローチの仕方というのも、もちろん一つのポイントではあるんですけど、私自身が尾和さんの最初のワークショップに参加者として受けたときの体験が、すごく印象に残っていて。右脳的な刺激だったり、「そもそも自分って何だろう?」という問いに向き合う感覚だったり、そういう体験がもっと広がっていくと、人や組織が変わっていくんじゃないかと感じたんです。それに加えて、社内ではなかなか難しい部分もあるんですが、ワークショップに限らず、何らかの形で価値を言葉にして、「発信して伝えるってこんなに楽しいんだよ!」という実感を共有できる仲間が増えたら素敵だなと思っていて。やっぱり仕事として一緒にプロジェクトを進めていく中で、少しずつでも、自分たちと関わった人たちが変わっていくのを感じられる瞬間って、本当に嬉しいし、ワクワクするんですよね。そうやって、「楽しい」「心が動く」「新しいつながりが生まれる」と思います。そんな世の中やコミュニティが広がっていくといいなって、そう思ったのが一番大きな理由です。
尾和:一緒に行ったプロジェクトではクライアントのどんな変化を感じられましたか?
佐々木:ワークショップに現場の人たちが入ると、「一緒に働いている横の仲間がどんな人なのかが分かった」とか、「会社のことをちゃんと話す機会がこれまでなかったから、すごくいい時間だった」といった声をよく聞きます。やっぱり、あえてみんなで集まって“会社の話をする”って普段はなかなかないことなので、そういうきっかけになるのがすごく大きいんですよね。
尾和:実はワークショップの裏側では論理的で緻密な設計をしているのですが、なかなかそれが表に見えづらい部分でもあるので、担当者の方や参加者の方々にそこが少しでも伝わるといいなと思っています。ワークショップの効果についても伝わりにくいのが課題です。
佐々木:頭の中で起きている変化が大きいので、外から見ると分かりにくいのかもしれません。参加している人自身の中では、すごくいろんなことが動いていて、内面的には確実に変化しているんだけれど、それを人にどう伝えるかとか、プロジェクトとして何か具体的なアウトプットが出せるかという部分になるとなかなか見えづらい。
尾和:そうですよね。でも世の中では、人は簡単に変われないと言われていますが、「人や人生を変えてしまうのはすごい」と他のお客様からも言っていただけることがあります。変化を求めている人や組織、ひいては街や社会に価値を届けていきたいです。
尾和:今のお話を伺っていて思ったのですが、10年程前からビッグデータや行動データの分析が主流になって、可視化できる領域がどんどん広がってきましたよね。それに対して、ワークショップって、生の感情や思考、不安といった“これまでデータ化されてこなかった声”が集まる場だと思うんです。そういう“ローデータ”を拾えることが、すごく大きな価値なんじゃないかと感じていて。それをうまく設計して、あとから分析できるようにしておくと、見えていなかったものが見えてくる。ワークショップの本質的な意義って、まさにそこにあるのかなと思いました。
佐々木:今は、データで可視化できる時代です。でもワークショップの価値は、データに現れない部分。つまり、社員が何にワクワクしているのか、何に違和感を抱いているのか、そういった感情や内面の変化が見えることにあると思っています。実績やスキルをデータ化しても、「どう感じているか」はデータとして扱われにくい。けれど、実はそこが最も重要な部分かもしれません。ブランドの仕事でも、「データだけでは人は動かない」と感じる場面が多くあります。それはお客様だけでなく、ブランドを育てる企業の社員にも言えることです。売上や認知度などの数値は追えても、ワークショップの中で交わされる言葉や、一緒に働く人の中で起きる“感情の変化”はコントロールできない。だからこそ、その瞬間を共有できる場として、ワークショップには大きな意味があると感じています。
尾和:一緒にプロジェクトをさせていただいた東急バス株式会社様は、どんなところを喜んでくださったと思いますか?
佐々木:東急バス様のプロジェクトでは、運転手、整備士、営業所や管理部門など社員の皆さんを巻き込んだので、部門を超えて会社の話をする機会が生まれたことを評価していただきました。その時に重要だったのがファシリテーターのパーソナリティだと思っています。尾和さんが出てくださると、そのフレンドリーで明るいキャラクターや、一生懸命に話してくださる姿に、自然と「ちょっと聞いてみようかな」という空気が生まれるんですよね。そういう意味でも本当にご活躍いただいたと感じています。私がファシリテーションをしていたら、デスクワークをやってる人たちが得意とされる左脳的な文脈でブランドの話になると思われてしまうのですが、尾和さんのワークショップのように、フィッシュボールなど体を使ったアクティブな進行があると、日ごろパソコンに向かう業務が少ない方たちも楽しんで参加してくださった印象があります。私はその様子を少し引いた立場から見ていたんですが、みんなが自然と参加して、前向きに話している様子がとても印象的でした。
尾和:その中で、社員の方から自発的に他の社員に「(整備について分からないことがあれば)俺講習しますよ?」という声が出てきたのも印象的でしたよね。みんなで会社のことを話すことで、これまで見えなかった課題が見えて、解決策を自分から出してくれるような会社に対するロイヤリティが高まる感じもありますね。
尾和:ワークショップやアート思考を体験したことない方が結構多く、また変化を起こすことに後ろ向きな方に出会うことがあります。そういう方たちが勇気を持てる一言をいただけますか?
佐々木:「分からないもの」って、やっぱり怖いんですよね。変化と同じで。でも、それなりにキャリアを積んできた人ほど、余計にその怖さってあると思うんです。やったことがないからこそ、不安になる。でも、もし今「何かを変えなきゃいけない」と思っているとしたらむしろ“自分が分からないこと”“知らないこと”こそ、やってみるべきなんじゃないかと思うんです。今まで知っていること、やってきたことだけではうまくいかないと感じているからこそ、「何かを変えたい」と思っているはずです。だとしたら、逆に「分からないこと」ほど価値がある。むしろそこにこそ可能性があるんじゃないかって。「こんなタイプの人と話したことないな」とか、「こういうアプローチは初めてだな」と思うような出会いや体験って、それまでの自分にはなかった視点だと思うんですよね。つまり、それだけ“接点がなかった世界”ってことですし、だからこそそこに飛び込む価値がある。今やっていることが、全部“知っていること”の範囲内なのであれば、変化が起きないのも当たり前で。「やったことがないことをやってみる」ことが、何かを変えるきっかけになるんじゃないかなと思っています。
尾和:「Windows 2000 Home Edition」という皮肉めいたキーワードが話題になっていたのですが、ご存じですか?窓際族で、年収2000万、在宅勤務っていう、働いているようで実は機能していない状態の会社員を揶揄した表現で…。ちょっと笑えないけど、現実にあるなって思ったりして。
佐々木:正直、楽に生きられるならそれも良いと思いますけどね(笑)。でも、現実的にそれは難しいし、今の仕事をこのままずっと続けていくのも無理があるなと感じています。仕事をする年齢のゴールが60歳なのか、70歳なのか、もっと先なのかそう考えた時に、今のうちに違うスキルや楽しさを見つけておかないといけないと思っています。日本を代表する製造業の事業会社で何千人という大規模な早期退職募集のニュースを目にします。そういった企業で定年まで残っていれば、それなりの待遇が約束されている。ただそれでは、特定の領域や社内のことに詳しくても、外の世界を知らないまま人生の大半を過ごしてしまう怖さがあります。
尾和:そうなんですよね。世の中のことを知らないまま大人になってしまう人が多いというのが、今の時代の大きな課題なんじゃないかと感じています。
佐々木:日本の社会全体、特に国のシステム自体がもう限界にきていると感じます。大学に入ればゴール、就職すれば安泰、というようなターニングポイントが2つしかないキャリアのつくり方がずっと前提になってきました。会社に入ったら、その中でどう昇進するかだけが基準で、外の世界と接点を持つ機会が少ない。実際、日本の社会人は世界の中でも勉強していないと言われてますよね。だから社内のことには詳しくなるけれど、社外のことを何も知らないまま歳を重ねてしまう人が多いんです。そういう人が「3000人早期退職です」と言われた時に、どうすればいいか分からない。ある意味、そういう風に育てられてきた側面もあると思います。優秀な人ほど外に出ていく一方で、例えば新規事業をやらなければいけない局面で新規事業を任せられる人が社内にいない。なぜなら、そんなこと考えたことないし、教わってもいないから、となる。会社も教えてくれないし誰も「外の世界を見ろ」と言ってこなかった。そうやって“会社の中だけを見る人”を量産してきたのが、これまでの日本企業なのかもしれません。このような社会の構造に危機感を感じた人から変わっていくことが必要だと思います。
尾和:今までの話と重なるところはあるかもしれませんが、今のような時代だからこそ、「こういう人たちにBulldozerの価値を体験してほしいな」という想いがあれば、ぜひ教えていただきたいです。また、これからも「ゆえん」のパートナーのBulldozerと、こんなことができたら面白そうという展望があれば、ぜひそのあたりも伺えますか?
佐々木:もし何かを変えたいと思っているなら、これまで接点のなかった人や考え方に触れてみる。それが一つの入り口になると思うんです。 自分の“箱庭”の外に出てみると、これまで見えなかった景色が少し見えてくるかもしれない。それって、数字で成果が測れるようなものではないけれど、個人の中で自然に何かが動き出す、そんなきっかけになるんですよね。そういう意味で、ワークショップのようなアプローチはすごく有効だと思っています。そして「ゆえん」として尾和さんとご一緒する中でも、そうやって「変わりたい」「何か変えよう」と思っている人たちが、少しでも増えてくれたらいいなと思っています。
尾和さんのようにバイタリティがあって、頭の回転が速くて、フットワークも軽くて…そういう姿を見て、「あの人だからできるんでしょ?」って思ってしまう人もきっと多いと思うんです。でも、実はそうじゃない。大事なのは“能力”というより、ものの捉え方や目線の持ち方。それだけで、自分の働き方や気持ちって少しずつ変えられるんです。そうやって、自分なりの変化を楽しめる人が増えたらもっと楽しい世の中になるんじゃないかなって思います。
尾和:ぜひこれからも一緒に周囲に変化を起こしていきたいですね。最後にお話しされたいことはありますか?
佐々木:ありますあります。私は本当に尾和さんという存在によって、人生がいろいろ変わったなと感じています。 だから、今、毎日がすごく充実していて楽しいんです。感謝してもしきれないくらい。本当にありがとうございます。
尾和:そんな風に言っていただけて、本当に嬉しいです!これからもよろしくお願いします。またどこか行きましょうね!
「アート思考、良さそうだけどピンときてない・・・」「うちの組織にどう適用したらいいかわからない」
そう思うのは自然なことです。どんなことでもお気軽にご相談ください。