目次
はじめに|2025年問題は「医療・介護」だけの話ではない
2025年問題は、医療や介護の話ではありません。
企業経営においては、「これまで暗黙に成立していた前提」が崩れる年です。
「2025年問題」と聞くと、多くの人が医療・介護の逼迫や社会保障費の増大を思い浮かべるでしょう。しかし、企業経営や組織運営の視点で見ると、この問題の本質は別のところにあります。
それは、長年企業を支えてきた人材が一斉に第一線から退くことで、知見や判断基準、そして企業文化そのものが失われていく可能性があるという点です。
多くの企業では、すでに団塊世代の定年退職は終わっています。それでもここまで業務が回ってきたのは、再雇用や顧問、あるいは「困ったらあの人に聞けばいい」という暗黙の支えがあったからではないでしょうか。
その前提が、いま静かに、しかし確実に崩れ始めています。
2025年は単なる人口構造の節目ではありません。
組織がこれまでのやり方を続けられるのか、それとも設計そのものを見直すのかが問われる転換点なのです。
あなたの組織では、知見や判断基準、企業文化は個人に依存せず、次の世代へと受け継がれる状態になっているでしょうか。
1. 2025年問題とは──企業にとっての本当の論点
問題は「人が減ること」ではありません。
人が抜けたあとに、「何が組織に残るのか」です。
2025年問題とは、団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となり、日本社会全体に大きな影響を及ぼすことを指します。
社会全体では、医療・介護需要の拡大、社会保障費の増大、生産年齢人口の減少といった変化が同時に進行します。
企業にとって本当に深刻なのは、「人が減る」という事実そのものではありません。
人が抜けたあと、意思決定・判断・改善が同じ質で行えるのか。
この問いに答えられない組織ほど、2025年以降に大きな揺らぎを経験することになります。
2. 社会構造の変化が、企業内部にもたらす影響
人手不足は一時的な問題ではなく、構造的な前提条件になります。
企業は「人を増やす」よりも、「人に依存しない組織設計」を考えて変わっていかなければならない時代に来ています。
多くの企業ではすでに、次のような変化が静かに進んでいます。
2-1. ベテラン層の完全離脱
再雇用や顧問として関わっていたベテラン層が完全に現場を離れると、「困ったときに聞ける人」がいなくなります。
判断の背景や、なぜそのやり方が選ばれてきたのかを説明できる人も減っていきます。その結果、暗黙知や判断基準、企業文化は一気にブラックボックス化していきます。
2-2. 次を担う人材が不足する組織構造
団塊世代の下の世代は、採用抑制期や非正規雇用拡大期と重なっています。その影響で、中間層が十分に育たず、意思決定や育成、引き継ぎを担う人材が慢性的に不足している企業も少なくありません。
結果として、マネジメントの役割が一部の人に集中し、組織全体の持続性が静かに損なわれていきます。
2-3. マネジメント負荷の急増と属人化
人は増えない一方で業務は減らず、判断や調整を担える人も限られている。その状況が続くと、マネージャーやリーダーは疲弊し、業務は特定の個人に依存していきます。
「結局あの人しか分からない」という仕事が増えるほど、組織は脆くなっていきます。
3. なぜ今、「企業文化」が改めて問われるのか
企業文化は、平時よりも人が抜ける局面でこそ真価が問われます。
企業文化とは、理念やスローガンではありません。
日々の意思決定や行動のなかで判断に迷ったときに無意識に立ち返る基準、「この会社では何を良しとするのか」「何を優先するのか」を規定している基準そのものです。
ピーター・ドラッカーは
「企業文化は戦略に勝る(Culture eats strategy for breakfast)」
という言葉を残しています。
この言葉が意味を持つのは、戦略を描いているときではありません。
戦略を実行できる人がいなくなったときです。
どれほど優れた戦略を描いても、それを実行する文化がなければ、戦略は機能しません。
そして文化は、人を通じてしか伝わらない。人が抜けるとき、文化も一緒に失われる可能性があるのです。文化が言語化され、共有されていない組織では、判断が遅れ、現場に裁量を渡せなくなり、結果としてトップや一部の管理職に負荷が集中します。
だからこそ今、文化をどう残すのかが経営課題として突きつけられているのです。
4. 団塊世代引退後に必要になる3つの取り組み
この状況に対して重要なのは、「何か新しい施策を始めること」ではありません。
どんな順番で、何を設計するのかです。
4-1. 暗黙知を形式知にする|企業文化・判断基準の継承
まず取り組むべきは、これまで個人の経験に埋もれてきた知見や判断基準を言語化することです。
どんな観点で判断してきたのか。
どこを重視してきたのか。
この会社らしさとは何なのか。
これらを整理しないまま引き継ぎだけを行っても、文化やスキルは残りません。
4-2. 属人化を防ぐための業務標準化・構造化
業務が人に依存している限り、人が抜けるたびに組織は弱体化します。
誰がやっても一定水準で回り、いつでも別の人に引き継ぐことができ、改善できる状態をつくること。
こうした状態をつくるためには、業務の標準化と構造化が欠かせません。業務の標準化と構造化は、単なる効率化ではなく、文化と知見を次に渡すための基盤づくりです。
4-3. AIを「保存装置・翻訳装置」として使う
近年、AI活用が注目されていますが、AIは魔法のツールではありません。
何を残すのかが定義されていないままAIを導入しても、
- 情報は増えるが使われない
- ナレッジは蓄積されるが活用されない
という結果になりがちです。
AIは、適切に使えば、人の知見や判断基準を保存し、次の世代が使える形に翻訳する「装置」として価値を発揮します。
ただし、何を残すのかが定義されていなければ、AIを導入しても情報が散らかるだけです。
その前提として、明確な要件定義が欠かせません。
5. よくあるご相談|多くの企業が抱えるお悩み
Bulldozerには、次のようなご相談が多く寄せられます。
- 業務が属人化しているのは分かっているが、どこから手をつけるべきか分からない。
- 引き継ぎ資料はあるものの、判断の背景や考え方までは残せていない。
- AIやDXを進める必要性は感じているが、ツール導入が目的化してしまっている。
- 団塊世代引退後、組織がどう回っている状態が理想なのか描けていない。
- 社内だけで議論すると、立場や前提の違いから話が前に進まない。
これらはすべて、「やるべき施策が分からない」ことが原因ではありません。
最初に整理すべき前提や目的が、言語化されていないことに起因しています。
6. だからこそ最初に必要なのが「要件定義」
なぜやるのか。
何を残すのか。
どこまでをゴールとするのか。
この整理を行わないまま進めると、文化継承も業務標準化もAI活用も、バラバラに進み、やがて形骸化していきます。

部分最適ではなく、組織として何を残し、どう変わるのかを定義すること。
それが、2025年以降も持続的に機能する組織づくりの土台になります。
要件定義とは、ツールを選ぶための作業ではありません。
組織としての意思を言語化し、共通認識をつくるプロセスです。
ただし、この整理は当事者であればあるほど難しくなります。
日常業務に深く関わっているからこそ、前提を疑うことが難しく、議論も堂々巡りになりがちです。
7. Bulldozerが提供しているのは、「考えるための場」
Bulldozerのワークショップでは、
文化継承・業務標準化・AI活用を個別の施策として切り分けるのではなく、
一体の組織設計として整理することを重視しています。
クライアントの要望を丁寧に聞きながら、
- なぜ今それが必要なのか
- 何を組織の資産として残すのか
- どこまでを現実的なゴールとするのか
を、短期間で構造化します。
「何から手をつければいいか分からない」状態から、
「ここから始めればいい」という共通認識をつくる。
それが、ワークショップの役割です。

Bulldozerがワークショップで使用するワークシートの一例
おわりに|2025年問題を超えて揺らぎのない組織になるために
2025年問題は、突然何かが壊れる出来事ではありません。
気づかないうちに、少しずつ「頼れる前提」が失われていく問題です。
今のうちに立ち止まり、自社に何が残っていて、何が個人に依存しているのかを整理できるかどうか。
その選択が、5年後・10年後の組織の姿を大きく左右します。
もし、ここまでに挙げた相談例のひとつでも当てはまるものがあれば、
それは検討を始めるタイミングが来ているサインかもしれません。Bulldozerのワークショップは、その最初の一歩として設計されています。
ご関心があれば、お気軽にお問い合わせください。
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