愛社精神とは?
突然ですが、この記事に興味を持ってくださった皆さんは、今所属している会社を愛していますか?愛社精神という言葉は、皆さんにとってどんな意味を持つでしょうか。一般的に愛社精神とは、自分が所属している企業を愛し、その一員として働いていることに誇りを持っている精神状態を指しています。この状態から、会社や仕事に対して貢献したいという自発的な意欲であるワークエンゲージメントが生まれてきます。内発的な動機付けによって個人のパフォーマンスが向上することで、会社の生産性も共に高まっていくのです。
これからの愛社精神〜再定義〜
”愛社精神”というワードはこれまでも多くの企業で言われていたことでした。
戦後から本格的に普及し、1955〜1973年にかけての高度経済成長期にかけて定着した終身雇用制度は、愛社精神を育むには打って付けのシステムでした。会社が倒産しない限り、定年まで勤め上げる環境では、働いている”時間の長さ”に比例して属する会社や共に働く社員に対しての”愛”が育まれていたのです。ですが、終身雇用制度が崩壊しつつある現代において、会社と接する”時間”は愛社精神を育むために機能していません。”愛社精神”を終身雇用制度における文脈で現在の雇用形態に当てはめた時に、その目的が”離職率を下げ、会社に長く勤めてもらう”ことになりがちです。
そこで現代の働き方において必要になってくるのが”愛社精神”の新たな定義です。社員個人が持つ能力を最大限に引き出し、能動的に生産性を高める手段として理解されるべきなのです。
”愛社精神”を育むためには、所属する会社の経営理念や事業領域に対する理解と共感、すなわち”腹落ち感”が重要です。会社の”オリジン”、つまり企業の根本的な目的や意義に対する腹落ち感を持つことが、愛社精神の育成につながります。勤続年数のようなわかりやすい時間軸を用いずとも、本質である”オリジン”を知ることがこれからの”愛社精神”に繋がっていきます。
愛社精神と言うけれど・・・そもそも愛とは?
”愛社精神によって社員個人の能力が最大限に発揮される”と一口に言っても、概念的で伝わりづらいかと思います。そこで、より根本的な部分である”愛とは”という観点から紐解いていきたいと思います。”愛”とは一般的に、感情や行動を指すものと考えられますが、さらに深く見ると、愛は人間の”活動”そのものと言えます。この活動は、能動的な行動と受動的な行動、二つの側面を持っています。能動的な行動は、自分が自由に決めた目標に基づいて進むものである一方で、受動的な行動は、外部の目標に追い立てられている状態を指します。
そして、ここがポイントです。受動的な行動が能動的に見えることがあります。情熱に満ちて活動しているように見えている人も、その情熱に操られている可能性があります。個人の外部にある目標、例えば焦りや嫉妬、野心、欲望、不安などによって動かされている場合、本質的には能動的ではありません。真の能動的行動とは、”自分に本来備わっている力”を用いることなのだと解釈します。
では、動詞の”愛する”とはどういうこと?
”愛”が能動的な活動である以上、自分に備わっている力を用いて”自ら踏み込む”ことが肝心になってきます。つまり、愛するとは”自分から与える”というニュアンスが強いのです。しかし、これは自分を犠牲にすることではありません。自分を活かす行為、つまり自分が持つもの(興味、知識、喜び、感動など)を他人と共有することが”与える”行為と言えます。これは自分も他者も活気づけ、好循環を生み出す行為なのです。
オリジンベースの愛社精神でこれからの働き方を実践!
”愛”が”自分に本来備わっている力を用いて”能動的”に与えていくこと、であると紐解いてきました。であるならば、これからの愛社精神とは、自分の内側から自然と湧き上がってくる力を活かし、会社や共に働く社員にオリジナルの価値を与え続けるということ、が核心となるのです。プレッシャーや期待、不安や焦りといった外的な動機付けはそこに影響しておらず、純粋に自分の力を発揮できている状態であり、仕事を”自分ゴト化”できている状態です。”自分ゴト化”とは、自分と会社の境界線が溶け出して曖昧になっているようなイメージです。会社やもっと広く社会に対して一体化していくことは、”自分ゴト化”の範囲を広げていくことに繋がります。内発的な自分自身の動機付けは、自分をよりフラット且つ客観的に見ることに役立つでしょう。
アート思考では、”自分に本来備わっている力”を”オリジン”と呼んでいます。
”オリジン”を知ることで、自分の中にある人間的な力を信じ、目標達成のために自分の力に頼ろうという勇気を持つことができます。AIの台頭が加速し、先行き不透明なVUCAの時代への突入も一昔前のことになってきました。加えて、2022年11月に公開されたOpenAIのChat GPTによって、パラダイムシフトが加速していると感じている方も多くいらっしゃると思います。こういったシンギュラリティが叫ばれている時代において、より”人間ならではの価値”が浮き彫りになってきています。AIによる世の中の変化を、1人1人の”オリジン”が発見しやすくなったとポジティブに捉えることで、人間の本来の価値を活かせる働き方が広がっていくでしょう。