アート思考とデザイン思考の違い
昨今、ビジネス界で注目されているアート思考とデザイン思考。書店にも売れ筋の本の中に、それぞれをテーマにした書籍が並んでいる光景を目にすることもあるかと思いますが、アート思考とデザイン思考の違いを答えられる方は少ないのではないでしょうか。
どちらもクリエイティブなイメージを抱く単語ですが、実はアプローチは真反対の思考法です!
読者のみなさまがお持ちの課題を意識しながらお読みいただくことで、目的に合わせた思考法の選択のために役立てていただければと思います!
アート思考とは
アート思考(アートシンキング)とは、アーティストが作品を創作する際の考え方をビジネスに応用した思考法です。
具体的には、芸術家が作品を通じて、自らが提案したい未来や、現代への問いを投げかけることと同じように、ビジネスマンも事業を通じて、自らが提案したい未来や、現代への問いを投げかける思考方法のことということもできます。
ですので、アート鑑賞したりデッサンしたり、またアート業界の知識を学ぶというわけではありません。
また、会社の創業者がまだ世にない商品・サービスを生み出し、企業を起こしたプロセスとも重ね合わせることができるため、創業者思考と言い換えることもできるものです。
デザイン思考
デザイン思考とは、デザイナーがデザインを考案する際の思考をビジネスに応用したものです。デザインは、ペルソナが抱えている課題の解決を目的にしているため、デザイン思考も現在の課題を起点としてその解決方法を探る思考法です。
ロジカル思考
物事を体系立てて整理し、道筋通りに矛盾なく考える思考法のことです。課題・問題に対し、要素別に仕分けをしたり、複数の視点から分析を行ったりすることで解決策や結論を導き出す、というプロセスを追います。
アート思考とデザイン思考の違い
昨今注目が集まっている思考法の中でも、特に混同されやすいアート思考とデザイン思考の違いについてご説明したいと思います。
アート思考とデザイン思考の違いをまとめると、以下の表のようになります。
アート思考 | デザイン思考 | |
---|---|---|
問題提起 | 目的 | 課題解決 |
人々が未だ意識していないような課題理想の未来 | 起点 | 人々が現在抱えている課題顧客、ペルソナ |
拡散から | 思考パターン | 収束から |
0から1 | 価値創出 | 1から10 |
脱常識的、既存の延長線上でない | アウトプットのスケール | 常識的、既存の延長線上 |
自分・自社ならではのアイデアを発想できる | メリット | 顧客のニーズから始まるので、成長戦略を描きやすい |
理解されにくいリスクがある正解のない問いに向き合う難しさがある | デメリット | 革新的な事業が生まれにくい |
表からもわかるように、アート思考は既存のモノ・コトの延長線上ではないからこそ正解がなく、自分で解を導き出せた先に、これまでにないアウトプットが生まれます。一方、デザイン思考は顧客の課題を解決することが目的のため、正解があるからこそ、プロのデザイナーではない企業人が行うと既存の延長線上に思考がとどまりがちになるのです。
加えて、前述したロジカル思考を上記の図に当てはめてみると、アート思考、デザイン思考のどちらにおいても取り入れることができる、「エンジン」のような思考法といえるかもしれません。なぜなら、物事を系統立てて矛盾なく考えるのがロジカル思考であるためです。アート思考、デザイン思考を問わず、要素を整理し矛盾なく進めていく上で有効だからです。
アート思考は、ロジカルさとクリエイティブさを行き来しながら深めていくものともいうことができます。それは、思考を発散しながらも系統だてて考えていくことを追求するプロセスだからです。
アート思考、デザイン思考はどちらが良い/悪いというものではなく、目的にあった思考法を選択することが重要です。
【具体例】アート思考とデザイン思考の違い
アート思考とデザイン思考の違いをよりわかりやすくするために、ここからは具体例を交えながら解説していきたいと思います。
あるドリルメーカーの社員がアート思考のワークショップと、デザイン思考のワークショップを受けた場合を、それぞれ想定していきましょう。
ドリルメーカーの社員Aさんがアート思考のワークショップを受けにいきました。そこでは、
1. 叶えたい未来像を思い描く
2. 自社の提供価値の本質を考える
という2つのワークを行いました。
ワークの結果、Aさんが叶えたい未来は「子どもがクリエイティビティを発揮できる世界」であり、そのためにドリルメーカーの一社員として、「子どもでも安全に工作ができるようにしたい」と考えたとします。
そして最後に、自社の提供価値について考えた結果、Aさんは”ドリルを使ってあける穴である!”という結論に一致しました。
ドリルは穴をあけるための工具です。ドリルを買いに来てくれるお客さんの目的は、”穴を開けること”であり、ドリルは手段でしかありません。お客さんの欲求の本質は”穴”が欲しい、ということなのです。
そこで、Aさんは叶えたい未来と提供価値の本質を踏まえ、実行に移す具体的な行動を考えはじめました。子どもに安全に”穴”を提供するには…という思考の先には、先端が尖っていなかったり、刃物ではない素材を使って、穴をあけるツールを開発しよう!だとか、子どもの手の力で簡単に綺麗に穴があくような木の板をつくるために加工技術を開発しよう!という発想が生まれるかもしれません。
一方、Aさんがデザイン思考のワークショップを受けたとしたら、社員の思考はどのようになるでしょうか。
顧客起点で考えるデザイン思考では、現状の課題を解決したドリルの開発、つまりドリルの改良を考えるプロセスを踏んでいくことになります。
したがって、Aさんの思考は、握りやすいドリル、重くないドリル、怪我をしにくいドリル、失敗しないドリル、などと、ドリルそのものの改良を考えていくことになるでしょう。
既にお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここまで例にあげてきたドリルの本質的な提供価値のお話は、「レビットのドリルの穴理論」です。
この理論は、アメリカの学者レビットの著書『マーケティングの発想法』(1968年)の中で紹介されたもので、顧客の欲求の本質を捉えることの重要性を説いています。
理論の中では、ホームセンターにドリルを買いにきたAさんを見たとき、「彼はドリルが欲しいのだな」と思うのは自然な解釈ですが、Aさんが欲しいものの本質はドリルを用いてあける”穴”だという具体例が用いられています。
この理論は、アート思考、とりわけ「オリジンベースド・アートシンキング」とも非常に親和性の高い発想です。「オリジンベースド・アートシンキング」のワークショップにおいても、自分・自社の提供価値の本質を見極める作業を行いながら、さらに100年後にも普遍的に通用する価値創出の方法を考えていきます。
このように、アート思考とデザイン思考はアプローチ方法がまったく異なるため、最終的に辿り着く解も別のものになっていきます。現在、自分・自社が抱えている課題や目的に応じて、適切に思考法を使い分けることが重要なのです。
【活用シーン別】アート思考とデザイン思考の違い
アート思考とデザイン思考、それぞれに適した活用シーンを解説していきます。
アート思考の活用シーン
アート思考の活用シーンは以下のような課題や目的がある時です。
・新規事業開発
・中期経営計画の策定
・人的資本経営(人材開発)
・パーパス経営
特に(株)Bulldozerが提供する「オリジンベースド・アートシンキング」は、上記の他にも以下のような課題や目的に対しても活用できます。
・社員のエンゲージメント向上
・愛社精神の増幅
・働きがい改革
・ブランド存在意義の再定義
・未来洞察力の育成
・適材適所な人事配置
・DX推進
・チームビルディング
上記のような課題・目的に対してもアート思考を活用できる理由は、「オリジンベースド・アートシンキング」は自分・自社のオリジン(存在意義)を起点に、叶えたい未来を考えるアプローチを行うからです。自分・自社のオリジンを捉え直すことで、自分が自社の一員であることの意義や働くことの目的、自らの価値観の本質を再確認できるため、チームのメンバーの相互理解の深化、仕事へのモチベーション向上、DX推進を行う上での手段の目的化の防止、などの効果を得られます。
デザイン思考の活用シーン
デザイン思考の活用シーンは以下のような課題や目的がある時です。
・既存商品の改良・リニューアル
・顧客の潜在的なニーズ・課題の発掘
デザイン思考はユーザー・顧客起点で考えていくことがその最たる特徴のため、既存のものを発展・進化させていく必要があるときに、特に有効といえます。
(株)Bulldozerのアート思考ワークショップ詳細については、資料請求からご確認いただけます。お気軽にお問い合わせください!
まとめ
本記事では、アート思考とデザイン思考の違いについて、具体例とともに詳しく解説してきました。
アート思考とデザイン思考の違いついて、まだあまり理解が広がっていませんが、目的に応じた使い分けが大切であるとお分かりいただけたでしょうか。
本記事をお読みいただいた上でも、今の自社の状況にはアート思考とデザイン思考、どちらの導入が適しているのか…と迷っていらっしゃる方は、ぜひ下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください!
Bulldozerでは、
・未来創造
・パーパス経営
・イノベーション
・人的資本経営
これらの分野においてアート思考を用いた完全オーダーメイドのワークショップ型コンサルティング、イベント、コンテンツ開発などをご支援しています。
各企業さま・部門・キャリア層に合わせて、これまで手が届かなかった痒いところ、うまく言語化できずにモヤモヤしていたところを、具体的に業務に落とし込む道を開拓します。
ご興味をお持ちいただいた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!私たちはお客様のビジネスやプロジェクトに最適なアート思考のアプローチを見つけるお手伝いをいたします。まずはお打ち合わせで、才能爆発や新たな可能性を感じてください。
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