1. 来期計画の失敗はなぜ起こるのか
来期計画を立てているにもかかわらず、
経営計画が浸透しない。
現場の動きがバラバラになる。
KPIは達成しているのに業績が伸びない。
このような状況に直面している企業は少なくありません。
営業はアポイント数を増やしている。
マーケティングはリードを増やしている。
各部門はそれぞれ努力している。
それにもかかわらず、会社全体としての成果が思うように伸びない。
こうしたとき、多くの組織で起きているのが「手段の目的化」 です。
本来、KPIや施策は成果を生み出すための手段です。
しかし計画の設計が不十分な場合、それらを達成すること自体が目的になってしまいます。
そしてこの問題は、現場の努力不足によって起きているわけではありません。
多くの場合、原因はもっと構造的なものです。
それは戦略と現場を接続する設計が欠けていることです。
来期計画とは、本来
企業の戦略を実行可能な形に落とし込むプロセスです。
来期計画の策定は、多くの企業で毎年行われる重要なプロセスです。
しかし実際には、限られた期間の中で急いでまとめる「年次イベント」 になってしまっていることも少なくありません。
例えば、
前期の数値をベースに少しだけ目標を調整し、
各部門がそれぞれの目標を積み上げて提出する。
そして限られた期間の中で、計画を急いでまとめる。
このようなプロセスでは、計画そのものは作られます。
しかし、それが企業の戦略や現場の行動を本当に導く設計になっているとは限りません。
その結果、計画は存在しているものの、
実際の意思決定や現場の行動とは十分につながらない状態が生まれてしまいます。
この状態を放置すると、組織は徐々に
「戦略で動く会社」から「作業で動く会社」へ
と変わっていきます。
来期計画が 戦略設計ではなく年次作業 になったとき、
組織は戦略ではなく 慣習で動くようになる のです。では、なぜこのような問題が起きてしまうのでしょうか。
その背景には、来期計画の設計構造そのものに原因があります。
2. 手段の目的化とは何か
手段の目的化とは、本来成果を出すための手段が、
それ自体を達成することが目的になってしまう状態です。
例えばダイエットを考えてみましょう。
目的は健康的に体重を落とすことです。
そのための手段として「毎日1万歩歩く」という目標を設定します。
しかし歩数だけを追い続け、食事の改善が行われなければ、体重はほとんど変わらないかもしれません。
歩数という手段が、いつの間にか目的になっている状態です。
同じことは企業の現場でも起こります。
営業組織であれば、利益を最大化することが本来の目的です。
そのためにアポイント数を増やすというKPIが設定されます。
しかしアポイント数だけを追い続けると、受注率が下がったり、単価が下がったりすることがあります。
結果としてKPIは達成しているのに、会社の業績は伸びないという状況が生まれます。
来期計画でも同様です。
会議回数・施策数・予算消化率
といった活動指標ばかりが管理されると、組織は成果ではなく活動を最適化するようになります。
短期的には数字が整って見えるかもしれません。
しかし中長期では組織が部分最適に走り、事業の方向性が徐々にずれ、ブランドの信頼性が少しずつ低下していきます。
来期計画が「活動管理」になった瞬間、企業は戦略企業から作業企業へと変わってしまうのです。
3. 戦略と現場を接続する本来の構造
手段の目的化は、個人の意識や努力の問題として語られることもあります。
しかし実際には、これは 組織構造の問題として発生するケースがほとんどです。
特に来期計画では、戦略と現場を接続する設計が弱い場合にこの現象が起きやすくなります。
本来、企業の戦略はそのまま成果につながるわけではありません。
戦略は、KPIや現場の活動を通じて初めて実行されます。
つまり企業活動は、本来次のような構造でつながっています。

この図は、戦略がどのように現場の行動につながり、最終的な成果へと結びつくのかを示しています。
まず、企業は 経営戦略 によって競争優位の方向性を決めます。
その上で、どの市場や領域で勝つのかを 事業戦略 で整理します。
そして、その戦略が実現されたときに「何が成功要因になるのか」を明確にします。
この成功要因を計測するために設定されるのが KPI です。
KPIは単なる目標数値ではなく、戦略が正しく実行されているかを確認するための指標です。
そのKPIを達成するために、現場では 施策や日々の活動 が実行されます。
こうした活動の積み重ねによって、最終的に 売上や利益といった成果 が生まれます。
つまり本来は、図で示したように
経営戦略 → 事業戦略 → 成功要因 → KPI → 施策・活動 → 成果
という流れが一つの構造として接続されている必要があります。
しかし来期計画の設計が不十分な場合、この接続が途中で弱くなってしまいます。
例えば、
成功要因が十分に整理されないままKPIが設定される。
KPIの意味が現場に共有されない。
施策がKPI達成のためだけに設計される。
このような状態では、KPIは戦略から切り離された指標として運用されてしまいます。
その結果、現場はKPI達成に向けて努力しているにもかかわらず、企業全体の成果にはつながらないという状況が生まれてしまうのです。
つまり問題は、KPIそのものではありません。
問題は KPIが戦略と接続されていないこと です。
来期計画において重要なのは、単に目標数値を設定することではありません。
戦略 → 成功要因 → KPI → 現場活動
この流れを一つの構造として設計することです。
この接続が明確になることで、KPIは単なる数字ではなく 戦略を実行するための指標 になります。そしてこの設計こそが、来期計画の本来の役割なのです。
4. 失敗しない来期計画の設計プロセス
来期計画を機能させるためには、戦略と現場をつなぐ設計プロセスが必要です。
その基本となるのは、次の5つのステップです。
Step1:戦略の前提を整理する
市場環境、競争環境、自社の強み。
まず企業がどこでどのように勝つのかを明確にします。
Step2:成功要因を特定する
その戦略が成功するためには、
どの要素が最も重要なのかを整理します。
ここが来期計画の核心です。
Step3:KPIを設計する
成功要因を定量的に把握するための指標を設定します。
KPIは活動ではなく、成功要因の進捗を測る指標でなければなりません。
Step4:施策を設計する
KPIを改善するために、どの施策を実行するのかを決めます。
Step5:現場の行動に落とし込む
最後に、組織の役割と具体的なアクションへと分解します。ここまで設計されて初めて、
来期計画は組織の行動を動かすものになります。
5. 来期計画を機能させる企業の共通点
来期計画が機能している企業には、いくつかの共通点があります。
それは、計画を単なる数値目標としてではなく、戦略実行の設計図として扱っていることです。
経営陣は、KPIの数字だけではなく、その背後にある成功要因を常に確認します。
現場は、施策を実行するだけではなく、それがどの成功要因に影響するのかを理解しています。この状態では、KPIは単なる管理指標ではなく戦略を実行するための共通言語になります。
6. 来期計画が機能しているかを確認する3つのチェックポイント
ここまで、来期計画が機能するための構造について説明してきました。
では、自社の来期計画は本当に戦略と現場を接続できているのでしょうか。
次の3つの問いに答えることで、現在の計画設計の状態を確認することができます。
① KPIは「成功要因」を測る指標になっているか
KPIが単なる活動指標になっていないかを確認します。
例えば「アポイント数」や「会議回数」だけを追っていないでしょうか。
その指標が、本当に事業の成功要因を測るものになっているかが重要です。
② 現場はKPIの意味を理解しているか
KPIが設定されていても、その背景にある戦略や成功要因が共有されていなければ、現場は数字を追うことしかできません。
現場のメンバーが
「このKPIはどの成功要因につながっているのか」
を説明できる状態になっているかを確認する必要があります。
③ 施策はKPIを改善する設計になっているか
多くの企業では、施策が「とりあえず実行する活動」になってしまっています。
重要なのは、
施策 → KPI → 成果
という因果関係が明確になっていることです。
もしこれらの問いに明確に答えられない場合、来期計画はまだ 戦略と現場を十分につなげられていない可能性があります。
その場合は、計画の数値を見直すよりも、
戦略 → 成功要因 → KPI → 施策
という設計構造そのものを見直すことが重要です。
7. 来期計画の設計にお悩みの方へ
来期計画が形だけのものになってしまう背景には、戦略と現場を接続する設計の難しさがあります。
実際、多くの企業で次のような課題が見られます。
・来期計画を作っても現場が動かない
・KPIは設定されているが戦略とつながっていない
・計画が活動管理になってしまっている
もしこのような状況に心当たりがある場合、問題は計画の内容ではなく、計画の設計構造にある可能性があります。
Bulldozerでは、戦略設計、KPI設計、事業構造の整理といったプロセスを通じて、戦略と実行を接続する計画設計支援を行っています。
来期計画の設計を見直したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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